雑草                    

「雑草の如く」とか「雑草のような生き方」とか「雑草」に関する表現は好意的な比喩が多い。
考えてみればどんな過酷な状況でも劣悪な環境でも周囲の全てを糧として憎憎しいほど逞しく生きている。放射能さえも糧にするのか?・・。
九月の「てごうし隊ボランティア活動」の現場は福島県南相馬市小高区。問題の「福島第一原発」から僅か
13
14kの距離で当然「立ち入り禁止区域」であった。
復興には程遠い無残な状況で駅周辺の中心街も崩れたままの家屋が放置され、道路には瓦や瓦礫が散乱、商店も学校も人一人見えず静まり返り、
生い茂る雑草が悲惨な状況を増幅させていた。住民全てがチリジリバラバラになっている。前回までの活動の山元町は地震と津波の被害だけだったが、
今回の南相馬市は地震と津波の他に放射能汚染と云う深刻極まりない災禍に遭っているのである。眼前に展開する現実を直視する時、そこで平穏に過ごし、
平和に暮らしていたであろう方々の事を想う。家族揃って無事でいて欲しいと祈らずにはいられない。更にこの家のご家族の周囲の方、友人知人
・職場の仲間・趣味の仲間・中には気に食わない人間も皆、無事だろうか・・元の平穏な生活に戻れるのであろうか、目頭が熱くなる。可哀想でならない。

復興まで何年かかるか解らないが、私の体力と状況が許す限り東北支援を続けたいと思う。

我々に与えられた作業内容は二日共に単純な作業で仮設住宅に避難されている被災者の自宅周辺の草刈作業である。
現場とか作業内容は当日の朝、当地のボランティアセンターで指示されるので、ソノ時まで何処で何をするのか全く解らない。
3台の草刈機の他に必要な道具、燃料が支給された。当然だがソノ日の健康管理、飲食とか全ての事については山行と同じ、自己責任となる。
「線量計」で放射能濃度を計測して貰い「防護服」を着用して気温34度の中での作業は雑草や放射能より熱中症との戦いでもあったが、
最終的に私達の体内に <ナンチャラカンチャラ、20ミリ、マイクロシーベルト>とか云う数値の放射能が溜まったと知らされた。
「ああ、そうですか」と云うしかない。その辺の病院でレントゲン撮影される数百分の一の数値しか無いらしい、
百歩譲ってソノ影響が出る数十年先には私はこの世に居ない。恐れる事は何も無い。

それにしても草刈機3台を駆使しての懸命な作業が何となく進まない・・何かが違う、何で作業が進まないか・・ふと5年目のある光景を思い出した。
当時私は福山山岳会の4000回記念号の「はいまつ」の編集に携わっていた。山岳会の種々の活動の一つの「登山道整備」の模様を取材の為
、萩原さんリーダーの登山道整備に参加した。10人近い仲間は萩原さんの指示に従い、縦一列になり草刈機等で黙々と確実に雑草を掃い作業されていた。
もっとも登山道なので横一列には並べない、この事を思い出した。休憩時に私の提案が通り、それまで3台の草刈機はバラバラだったが、
同じコースで縦一列になり数メートルずつズレて作業した。みるみる能率があがり面白い程作業は進んだ。黒木さんが手を叩いて喜んだ。
今回、12人の参加者の中で福山山岳会の仲間は彼女と私の二人だった。

ここで5年前の登山道整備参加の経験が役に立ったとは・・・

「役に立った」と言えば失礼な言い方になるが、私達が現場まで往復できるのはボランティアセンターが手配、配慮してくれた車両である、
 <南相馬ボランティアセンター>のステッカーの文字も誇らしく、大活躍している乗用車の一台は6月の活動の時、
福山からバスに並走して来た福山山岳会の仲間の1人が寄贈された車だった。懸命に南相馬市ボランティアセンターで頑張っている姿に何とも云えぬ懐かしさと、
頼もしさとの想いが交錯し、思わずボンネットを撫でながら「お互いに頑張ろうな!」と声を掛けた。

東日本大震災の後、「絆」と云う言葉を一種の流行語の如く至る所で見聞きする。私は1300k離れた遠い福島の地で「福山山岳会」の仲間との「絆」を実感した。
福山の我々は何と幸せであろうか、家も家族も仲間も周囲も・・全てが平穏で平和である。時には衝突や言い争いが有るにせよ、
被災された何十万人の方々の共通の願い、心底から希求しているのは「平凡な日々を取り戻したい」の一言に尽きる。退屈極まりない同じ事を繰り返す平凡な日々。
この事こそが、如何に素晴らしく貴重な事かと身を以って再認識した。

東北支援から帰って約半月後、「福山市民ウオーキング」の登山道整備の為、10人近い仲間と「ふれ愛ランド」に集合し最終の草刈とチエックをした。
このルートは半年以上前から小林浩二さんや小林征三さんご夫妻が何度も足を運ばれ、コースタイム等入念な調査や草刈が行われていた、
他の仲間も下見や草刈で共に汗を流していたお陰で大部分は目視でOKだった。この日も仲間達の草刈機のエンジン音と共に歩いたが私も草刈機が欲しくなった。
山岳会の「登山道整備」にも時には参加するべきと思った。

10月14日 第12回福山市民ウオーキングが実施され、市民・会員合わせ総勢139名が参加された大会は無事故と笑顔で大成功だった。(画像は南相馬市小高区にて)